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74兆円の「埋蔵金」? 日銀のETF処遇に注目

日本銀行が大規模緩和策の一環として購入したETF(上場投資信託)の保有額は、時価で74兆円に達していると推計されています。しかし、今後の出口戦略が注目されており、市場や政界からも関心が高まっています。

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ETFの買い入れが増加した理由とは?時価74兆円の背景を解説

日本銀行がこれまでに購入したETFの総額は、株価上昇も相まって大幅に増加しています。民間のシンクタンクによると、日本銀行はGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)を超えて、日本株の最大の株主となっています。しかし、2022年3月に金融緩和政策が転換され、新たなETFの購入は行われなくなりました。この政策は株価を支えたと評価されていますが、中央銀行が大量の株を保有する異例の状況の解消が課題となっています。ETFの購入は2010年10月の金融政策決定会合で決定されました。

当時の日本経済はリーマンショックからの回復途上で、円高と株価の低迷が続いていました。この状況下で日本銀行は、伝統的な金融政策の効果が限定されていた中で、異例の政策導入を決めました。その一環として、短期金利の操作や他の伝統的な手法に代わってETFの買い入れが行われました。しかし、当時の白川総裁は、ETFなどのリスク性資産の買い入れが常態化する可能性を懸念していました。

初期の段階ではETFの買い入れ額は約4500億円に制限されていましたが、後に上限が増加しました。これは過度なリスクを懸念する投資家や企業を支援するための一時的な措置でした。しかし、黒田総裁の就任後、大規模な金融緩和策が展開され、ETFの購入は恒常的な政策に変わりました。黒田総裁の指導のもと、ETFの購入上限は年々拡大し、2020年には新型コロナの影響を受けて年間12兆円にまで増加しました。これによりETFの簿価は37兆円、時価で74兆円に達しましたが、市場の歪みやリスク資産の拡大といった批判が多く浴びています。

活用策【1】 希望する国民に販売する

一方、現在ではETFは大幅な含み益を持つ状態であり、74兆円にも上る資産の活用が注目されています。国民に割安で販売するという案も浮上しています。民間のシンクタンクによると、過去に香港の金融当局が行った出口戦略の事例があります。1998年のアジア通貨危機に際し、香港の金融当局は株の大量売りに対抗するために市場介入を行いました。その後、第三者機関を設立して中立的な立場で株の管理や情報開示を行い、翌年には割安価格でETFを販売し、長期保有を促しました。この事例は市場の大混乱なしにETFを売却できたものであり、日本でも参考になる可能性があると専門家は指摘しています。

 

活用策【2】 政府が買い取って財源に

政界では、日本銀行保有する巨額の資産に対する関心が高まっています。立憲民主党子育て支援の財源として、政府がETFを買い取り、得られる分配金を利用する案を提案しました。この案は一部の議員から支持を得ていますが、他の政党からは異なる提案も出されています。例えば、自民党からは防衛費に充てる案や社会保障費に充てる案などが挙げられています。しかし、政府がETFを買い取るための予算確保やその実現可能性についての課題も指摘されています。

 

活用策【3】 市場で売却

日本銀行は、即座にETFを市場で売却することが可能です。現在、含み益を持つ株を売却すれば、その売却益が国庫に還元される可能性があります。ただし、大量の株を一気に売却すれば株価の急落や市場の混乱を引き起こすリスクがあります。実際、日本銀行は過去に金融機関から買った株を年間3000億円程度売却していますが、74兆円分を売却するには膨大な時間がかかるため、現実的ではないという指摘もあります。

 

日銀はいつ動くか

日本銀行は、ETFの活用に関する提案が寄せられていますが、政策変更が最近行われたばかりであり、急いで処分する必要はないという見方があります。植田総裁も時間をかけて慎重にETFの取り扱いを決定していく方針を示しています。専門家は国民的な議論の重要性を指摘しており、将来のリスクや活用方法について幅広い議論が求められています。現在は株式市場が高騰しており、ETF埋蔵金として機能していますが、将来的に相場が悪化すれば負の遺産にもなり得ます。日本の大型連休中には、商社などが本決算を発表するほか、日銀の金融政策決定会合の議事要旨やアメリカの中央銀行であるFRBの会合の結果、アメリカの雇用統計の結果などが注目されています。

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