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融資手数料の罠:銀行の戦略と金利の影響

引き返せない融資手数料の罠

銀行が融資手数料に傾倒することで、金利の上昇圧力が弱まっている状況だ。

ある銀行の住宅ローン担当者は虚を突かれた。日銀がマイナス金利解除を発表後の3月21日、SBI新生銀行は住宅ローンの変動金利の優遇キャンペーンを打ち出し4月以降の新規申し込み者や借り換え申込者を対象に、最優遇金利を0.42%から0.29%まで引き下げた。

それとは対照に同行は預金金利を3月下旬から引き上げている。資金調達費用がかさむ中で住宅ローン金利を引き下げれば、利ザヤの縮小は不可避だ。それでも同行が最安値水準の金利を提示した理由は「融資手数料」だ。

 

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今までの住宅ローンは、利用者が保証会社に保証料を支払う方式だったが、近年は保証料を取らない代わりに、銀行に数10~100万円程度の手数料を支払う融資手数料型が普及。手っ取り早く収益を上げられるとあって、ほとんどの銀行が保証料型から手数料型へと移行している。

前述の最優遇で0.29%の低金利を実現するには、住宅ローン契約時に借入額の2.2%を一括で支払う必要がある。5000万円のローンなら手数料は110万円必要だ。赤字覚悟で金利を下げる代わりに、住宅ローンの申し込み件数を増やして融資手数料で稼ぐつもりだ。

しかし融資手数料への依存は諸刃の剣でもある。ある銀行の首脳は「手数料型は『麻薬』だ。一度導入したら最後、収益を維持するためにローンの実行件数を追い求めないといけなくなる」と話す。

金利を引き上げ申し込みが減れば、手数料が目減りしかねない。こうした事情も、銀行が変動金利の引き上げをためらう一因だ。

 

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短プラを引き上げた勝算

金利水準の我慢比べの住宅ローン市場。ある銀行の社長は「今の住宅ローン金利の決まり方は合理的ではない。マーケットは相当ゆがんでいる」と喝破する。「マーケットを適正な金利水準に誘導したい。ユーザーの利便性を改善させて、金利競争によらずに住宅ローンを獲得する」

その言葉通り、同行は5月1日から短プラを0.1%引き上げる。基準金利の判定日の10月1日時点で短プラが引き上がったままなら、2025年1月からは住宅ローンの返済額が増える可能性が高い。

先陣を切って短プラを引き上げた同行に勝算はあるのか。

同行には秘策があるという。5月下旬から投入する邦銀初のデジタルプラットフォーム「かんたん住宅ローン」だ。住宅ローンを利用したい個人と不動産業者、銀行をオンラインでつなぎ、必要書類の受け渡しや連絡、進捗の確認をすべてプラットフォーム上で行う。従来の申し込み手続きと比較して審査スピードは2倍、コストは半分に抑えられる見通しだ。

利便性が高ければ、他行より金利が高くても顧客を得られると踏む。狙いは個人はもちろん不動産業者もだ。住宅ローン業務の負担軽減につながれば、提携業者が同行の住宅ローン商品を積極的に紹介する動機づけとなる。

多くの銀行は10月に基準金利の見直しを行う。大手銀行に追随して利上げに踏み切るか、あるいは低金利を維持して利上げを嫌う顧客の受け皿となるのか。銀行ごとの対応が焦点となりそうだ。

 

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