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ドイツ、失業者数が10年来最高に達する


2023年、ドイツは米ドル建ての名目国内総生産GDP)で日本を抜き、世界3位の経済大国となりました。しかし、その後の2024年には失業者数が過去10年で最も多くなる見込みです。

ケルン経済研究所(IW)が示した予測によれば、2024年の失業者は280万人に達し、これは2015年以来の最多となります。直近の2023年10-12月期の失業者数は137万人で、1年間で4万人増加しています。IWの予測では、今後1年で失業者はさらに140万人増えると見られています。

ドイツでは景気の停滞が続き、多くの企業で雇用の整理が進められています。例えば、今年1月に倒産した大手百貨店ガレリアは、その象徴的な存在といえます。ガレリアの経営破たんは、親会社のオーストリアの不動産大手シグナ・ホールディングスが欧州中銀(ECB)による急激な利上げや、それに伴う不動産市況の低迷の影響を受けて起こりました。経営再建中のガレリアは今後、ドイツ国内にある16の店舗を閉鎖し、これに伴い1400人が失業する見込みです。

また、ドイツを代表する完成車メーカーであるフォルクスワーゲンも、リストラに着手しています。

 

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ドイツ経済、不振が続く中で失業者数増加の懸念

2024年、フォルクスワーゲンを含む多くの企業で経営悪化が報じられています。フォルクスワーゲンは2024年1-3月期の営業利益と純利益が前年比で2割も減少し、管理職の早期退職を促すために引き当て金を計上するとの報道がありました。また、IWは景気が停滞する見込みで、ドイツでの雇用整理が広がると予測しています。

さらに、ウクライナからの難民や移民の増加も失業者数の増加に寄与しています。これにより、過去10年間で最も多い失業者数に達する可能性があります。

一方で、2023年の雇用者数は増加しています。これは、労働時間の減少や価値観の変化によるもので、家庭や学業との両立を図る現役世代が増えているためと考えられます。しかし、このような構造的な要因がある中で、企業は必要な労働投入量を確保しなければなりません。しかし、国民の勤労意欲を刺激することは容易ではありません。

経済界からは国民の働く時間を増やすべきだとの声が上がっていますが、逆に労働界では週休3日制の実現を求める声も根強いです。したがって、企業は労働者の数を増やすことで経済活動を維持する必要があるとされています。

このように、ドイツ経済の不振や失業者増加の背景には、国民の労働時間の短縮化といった構造的な要因があることが指摘されています。

 

ドイツ経済、高コスト化と労働力不足の課題

ドイツの経済界は、賃金の急増による経済の高コスト化という課題に直面しています。2015年に導入された最低賃金制度が、左派のショルツ連立政権によってインフレを上回るペースで引き上げられたことで、国民の賃金が急激に増加しました。その結果、企業業績を上回るテンポで賃金が上昇し、経済界を悩ませる状況となりました。

このような状況下では、今後ドイツの労働市場は労働供給の構造的な減少に直面することが予測されます。特に、戦後生まれのベビーブーム世代の引退が大きな影響を与えるでしょう。連邦統計局の推計によれば、2036年までに約1290万人の労働者が法定の年金受給年齢に達し、労働市場から退出する可能性があります。

さらに、ロシアへの警戒感や米国への不信感から、停止されていた徴兵制が再開される見通しとなっています。これも労働供給の減少要因となるでしょう。

労働力の不足はドイツ経済にとって負の供給ショックとなります。賃上げで労働力を確保しようにも、企業業績に見合う範囲でしか実現できません。また、外国人労働者での補填も限界があります。意思疎通や教育、文化的な摩擦などの問題があり、ハイスキル人材の獲得も競争が激しい状況です。

このような課題に対処するためには、政府や企業、労働組合などが協力し、労働市場の柔軟性を高める方策が求められます。

 

 

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ドイツ経済の課題と日本の見識

ドイツでは不景気の中でも人手不足が深刻化しており、今後の景気拡大に対応することが疑わしい状況です。資本生産性や全要素生産性を引き上げるためには投資が必要ですが、その過程には時間がかかります。また、不安定なエネルギー情勢や企業の慎重姿勢も投資を抑制しています。

結果として、労働時間と賃金のバランスを見直さなければ、経済活動を維持することが難しくなります。短期的には経済規模が縮小するかもしれませんが、労働時間と賃金のバランスを取りながら改革を進めることが現実的な選択肢となるでしょう。

ドイツが「インダストリー4.0」の名の下で投資を強化してきたにも関わらず、このような状況にあることは注目すべきです。日本も同様に少子高齢化に伴う人手不足が深刻化しています。需要の刺激だけでなく、供給を維持し効率化するためには、雇用の流動化や賃金の弾力化などの構造改革が重要です。

 

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