経済危機に直面する習近平政権
2023年5月23日、習近平国家主席は山東省で開催された座談会で、不動産や雇用の分野での改革の必要性を強調しました。同様の主張は、27日の共産党中東政治局の集団学習会でも行われています。国家安全保障を最優先としてきた習氏ですが、改革開放以来最悪の経済危機に直面し、方針転換を余儀なくされています。
経済の現状と課題
中国は過去40年間にわたり、比類なき所得と富の向上を享受してきましたが、現在はゼロ・コロナ政策の後遺症、不動産バブルの崩壊、急速な少子高齢化などの課題に直面しています。これにより、成長エンジンが失速し、経済の立て直しが急務となっています。しかし、中国政府は有効な対策を見出せずにいます。
不動産市場と雇用対策の不備
最近発表された不動産市場対策は、小規模な救済策に過ぎません。雇用対策も実効性に欠け、口先だけの政策に終始しています。これにより、中国国内では猛烈な「賃下げの嵐」が吹き荒れており、昨年は雇用者の約3分の1が給与を減らされました。今年はさらに厳しい状況が予想されます。
経済回復の見通しと第20期中央委員会第3回総会
7月に予定されている第20期中央委員会第3回総会では、抜本的な対策が打ち出されるとの期待がありましたが、その期待は薄れつつあります。むしろ、中国政府が改革開放以前の政策に戻り、土地の公有制を復活させるのではないかとの懸念が高まっています。
国民の不満と政府の対応
経済の回復が遅れる中で、中国国内では中間所得層を中心に不満が高まっています。米ハーバード大学のアンソニー・サイチ教授は、「中国の中間所得層の間でこれほど高いレベルの不満やいらだちを見聞きしたことがない」と指摘しています。しかし、中国政府は平静を装い、治安状況の良好さを強調しています。
経済無策と監視社会
中国政府は、都市に監視カメラを設置し、国民を強力に監視しています。治安維持に充てる公共安全費は常に国防費を上回っていますが、これが長期的に続く保証はありません。国民との「豊かさな生活を提供する代わりに共産党が国を統治する」という社会契約が失効しつつあることが、政府にとって致命的です。
未来への懸念と過去の教訓
習氏への不満は社会全体に広がりつつあり、中国社会の安定性に疑問が生じています。2008年のリーマンショック直後、中国のパナソニック工場や外国の現地工場で起こった暴動の記憶が蘇ります。今後、中国で同様の政情不安が発生する可能性があります。
まとめ
習近平政権は経済改革の遅れと国民の不満に直面しています。政府の有効な対策が見出せない中、経済の回復と社会の安定を維持するためには、抜本的な改革が求められています。